トークンエコノミーとITコンサルタント

旧帝大大学院卒業後、SIerからコンサルに転身した筆者が、トークンエコノミー、暗号通貨、構成技術やプロトコルについて学ぶブログになりました。最新の暗号通貨レポートの翻訳、ソースコードの解説、技術動向、週次レポート、など。特に、データ活用ビジネスの分界点・テクノロジー、資産価値を運用するテクノロジーも含めて書いていきます。

最近出回りがちな暗号通貨の価値評価モデルの問題点について言及する(訳)

ここ最近、暗号通貨のバリュエーションをモデリングする提案が多く見られる。

非常に興味深い提案や示唆に飛んだ文章を見ると知見が得られ、評価会社などもまだ存在しない業界ではこの流れは非常に健全で、今後も議論されるべき領域だろう。

しかし、出回っている多くのモデルは正しくはないだろう。
理論式で汎化された表現と、グラフやデータだけを見ていると気づかないかもしれないが、本当にその提案は正しいのだろうか。
正しい根拠や裏付けをもとに表現されているのだろうか。

今回は、世に出回る多くのモデルが正しく表現されていない理由を3つ示す。

①直感的な分析にとどまり、実証がなされていない

多くのモデルは実際の検証が行われないままモデルだけが提案されています。

グラフを見れば直感的に見えるが、その直感はチャートの一部に対して恣意的に当てはめられている場合が多い。
例えば、最近よく聞くのが流通する期待と実際の価値の変化をもとにした代表的な「The Crypto J-Curve」に近い類である。

ものすごい説明を大雑把に言うならば、「購入時は期待値から値上がりし、徐々に実用的な価値への期待が比重を高くしつつ、進捗状況やプロジェクトが成熟しコミュニティやプロダクトが広まると、再度期待値の上昇と共に実際の値段が高騰する」というものである。

実に心理的に耳障りのよい説明であり、実体験からも府に落ちる場合もありますが、〜期と呼ばれる境界はどう判定するのでしょうか。

②モデルを実証する入力データの定義が曖昧

とあるモデルでは、価格の流通速度や市場規模の算出にアクティブなアドレスを元にモデリングしているが、アクティブアドレスの定義が曖昧な場合があったりする。

例えば、bitinfocharts.comなどwebサイトで定義しているアクティブなアドレスなどを用いている場合があるが、そもそもサイトで定義しているアクティブアドレスが変わったらどうなるのでしょうか。

こういったように、入力データが恣意に用いられ意見形成されているのはアカデミックな世界も含めて往々にして行われるものです。

③モデルの仮定に使われている前提の定義が曖昧

フィッシャーの交換方程式やブラックショールズ方程式を参考にして使われるものも多いでしょう。

多くの理論式や確率・統計モデルには標本分布というものが存在します。
それらがどの分布と仮定するかしないかで、その式の裏付けの意味合いが大きく異なってきます。

例えば、株価の動きが幾何ブラウン運動に基づく、などという前提をもつブラックショールズ方程式を
暗号通貨にもそのまま応用してよいものでしょうか。

例えば、フィッシャーの交換方程式(MV=PQ)の式で考え、MはVの従属変数だと主張されるモデルがあるとします。

しかし、文脈の中でVをMの従属変数である場合を混同してパターンに当てはめている場合があったりする。
また、MをVの逆関数として定義してるが、その中でVとPQは独立変数である前提に立っている場合があったりします。
なぜ立証できるのでしょうか。

④オーバーフィッティングに関する問題(モデル、マイニング)

機械学習のモデルでは汎化性能と呼ばれる、データの入力に依存しない精度が評価を大きく左右します。
特定のデータではいい精度が出ても、別のデータで使い物にならない。ではモデルの意味がありません。
世の中の素晴らしいモデルや理論式は非常にシンプルであることが多いため、説明変数が多い場合はオーバーフィッティングになっている場合が多いです。

主張

このように、暗号通貨のモデリングには多くの罠が潜んでいます。
今はこの業界にまだ信用格付け会社などないため、各所手探りの中でモデルを考えることは評価すべきことだと思います。
基本は既存のモデルに当てはめるのが楽なので、短期的な目的で情報発信する人もいると思います。
ですが、暗号通貨がこれからも世に普及してくとこういったモデルについてはもっと議論されてしかるべきであります。

正しいかどうかの確証はないですが、多くの時系列モデルの定義にあたっては、スケールの前提を大きくとって決めることが大切です。
暗号通貨の時系列データの場合、週や月単位でのモデルのフィッティングはボラティリティも激しすぎてモデルが説明に耐えられませんので、年間単位で見たときの価格分布で考えるのがよい場合もあると思います。

根本的に思っていることは、現代の式が古典貨幣経済を前提に作られた式に当てはまらないと思っています。
インターネットの普及もあり、ネットワーク効果や様々な因果関係に影響していて、純粋な独立変数を見つけることが難しいと思われます。

またサービスごとに取得されるデータの量やログのフォーマットも異なってしまうため、前提条件となる入力値を選定するのにはもっともっと時間とデータと検証回数が必要だと思います。

もう少しバリュエーションについては情報収集していきます!

参考:
What’s Wrong with Cryptoasset Valuation Models Today?

The Crypto J-Curve – Chris Burniske – Medium

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